縞状鉄鉱層

    •   Banded Iron Formation(縞状鉄鉱層)

オンタリオ州 Wawa地区の縞状鉄鉱層

世界で最も古い岩石は、カナダのイエローナイフで見つかった41億年前のアカスタ片麻岩でしたが、
その後、2008年に42億8,000万年前の片麻岩が、カナダのハドソン湾の東岸で見つかりました。
カナダの大地は変成岩と花崗岩の、古い地質史を刻むカナディアンシールドと呼ばれる楯状地で構成されていて、
その起源はグリーンランドやシベリアを含む先カンブリア時代の古大陸でした。
カナダ東部の数十億年前の地質は、美しい風景の中の思いがけない場所に顔をのぞかせ、地球の歴史を語りかけてきます。ここでは27億年前の先カンブリア代(始生代)の縞状鉄鉱層をご紹介します。
縞状鉄鉱層は英語で BIF=Banded Iron Formation と呼ばれ、成因については古くからいくつかの説がありますが、
新たな化石の発見や生物学的な研究で明らかになっています。
縞状鉄鉱層は大規模な鉄鉱山として開発され、昔から人類に大変役立ってきた地層でもあります。
アルゴマ型の縞状鉄鉱層

Wawa地区の位置

スペリオル湖の北岸 アルゴマ地方北部、Wawa地区にはトランスカナダハイウエイを車で行きました。

イシクラゲ

裏庭のイシクラゲ

話題は突然、我が家の裏庭の事になります。
これはよく見かけるキクラゲのような生物です。
乾くと乾燥ワカメとそっくりです。
しかし、これはイシクラゲと言う藍藻(ネンジュモ)の一種の原核生物で、光合成を行って酸素を出す藻類なのです。
このイシクラゲのご先祖様が、今回の縞状鉄鉱層に大きく関係していたのです。
身近な裏庭のイシクラゲと縞状鉄鉱層(スペリオル湖型)と関係があった事に、大変驚きました。

Wawa地区の縞状鉄鉱層

Wawa地区の縞状鉄鉱層

縞状鉄鉱層について

2009年の夏にスペリオル湖北部へ行きました。
当時は縞状鉄鉱層に強い関心を持っていて、キャンプと合わせて行く事が出来たのは本当にラッキーでした。
縞状鉄鉱層の露頭は、アルゴマ(Algoma)地方の北部、ワワ(Wawa)の町の手前、約11kmの場所にあります。。
地図を見て場所に見当をつけ、慎重に運転を続けながら、右の切り通しに注意を払って走りました。
しばらくすると普通は見かけない模様の露頭を見つけて、芸術的な褶曲をはっきり確認できました。
露頭の長さは100m程度。道路の左側にも確認できますが、右の地層のほうが特徴がはっきりしています。
また右の露頭を登ると、磁鉄鉱が一面に広がっています。
露頭の地層は面白いほどに曲げられており、細かな部分まではっきり構造がわかります。
27億年前の縞状鉄鉱の地層は、その様相から上部・中部A・中部B・下部の3つに分けることが出来ます。

褶曲した縞状鉄鉱層

地層の分類

  • 上部=ゆるやかな褶曲の岩相(縞状鉄鉱)
  • 中部A=黒く薄い頁岩状の岩相
  • 中部B=大きな褶曲の岩相(縞状鉄鉱)
  • 下部=分厚い黒緑色岩相(変成を受けた火山岩)

白い部分は珪酸塩物質でチャートと思われます。黒い部分と赤い部分(錆)は磁鉄鉱です。
磁鉄鉱を含んだ薄いグレーの鉄珪酸塩になっている部分もよくわかります。
露頭の上は一面に磁鉄鉱が広がり、2万年前の氷河で削られたため、緩やかな起伏があります。
起伏には石英と磁鉄鉱の楕円状の模様があり、波打った起伏の方向と、氷河と共に移動した石によってつけられたひっかき傷から、氷河が流れた方向がわかります。
小規模な縞状鉄鉱層ですが、カナダの地質時代の大きなイベントが理解できる場所で、興味深く観察できました。

露頭の様子

縞状鉄鉱層(上)と火山岩層(下)

下部の輝緑岩と上部の縞状鉄鉱層

縞状鉄鉱層(上)と火山岩層(下)

褶曲した縞状鉄鉱層と輝緑岩層

赤いチャート層

赤いチャートと酸化鉄層

顕著な褶曲構造

著しい褶曲構造の縞状鉄鉱層

磁鉄鉱と珪酸塩層

磁鉄鉱と珪酸塩層

分厚い磁鉄鉱の層

分厚い磁鉄鉱層

薄い鉄の層

珪酸塩層の中の磁鉄鉱層

褶曲のある縞状鉄鉱層(上)と火山岩層(下)

著しい褶曲を見せる縞状鉄鉱層

縞状鉄鉱層(上)と火山岩層(下)

縞状鉄鉱層

青みのある黒い磁鉄鉱層と白い珪酸塩層の縞模様です。滑らかな表面は氷河が削った跡です。
海底の広く傾斜してデコボコのある火山岩堆積物の表面に、磁鉄鉱と珪酸塩が繰り返し堆積したことを物語っています。

氷河で削られた磁鉄鉱層の表面

縞状鉄鉱層の上部に広がる磁鉄鉱層

褶曲のある磁鉄鉱層

氷河で削られた層状の磁鉄鉱層

青みを帯びた磁鉄鉱

青みを呈する磁鉄鉱

岩石のサンプル

磁鉄鉱
青黒い色で鈍い光沢を持っている。
地層表層部は、この青みを帯びた磁鉄鉱で覆われている。
強い磁性がある。
磁鉄鉱相と炭酸塩相
黒い部分は磁鉄鉱ですが青黒い色ではない。
白い筋状に見えるのは炭酸塩相と思われ、表面が溶解して薄いクリーム色になっている。
変成を受けた輝緑岩
ガラス光沢のある長方体の斑晶が、明瞭ではないが方向性を持って点在しているが、向きは一様ではない。
この斑晶は大きなもので長さ3mm、幅 1.3mm程度。また、石英のような透明に近い粒子が含まれ、薄い褐色で巣状の丸い粒子も認められる。
この火山岩が縞状鉄鉱層の下部に存在している。

磁鉄鉱
縞状鉄鉱層の磁鉄鉱

縞状鉄鉱(磁鉄鉱層と炭酸塩層)

縞状鉄鉱 炭酸塩層と磁鉄鉱層

露頭下部の変成を受けた輝緑岩

露頭下部の変成を受けた輝緑岩

縞状鉄鉱層の型

火山岩を下部に持つ縞状鉄鉱層は、火山活動に関係するアルゴマ型だと言われています。Wawa地区の縞状鉄鉱層はアルゴマ型です。
この場所はガミタガマ・グリーンストーン・ベルト( Gamitagama Greenstone belt ) に含まれており、
北には東西方向に伸びるグリーンストーン・ベルト(苦鉄質・超苦鉄質の火山岩の地層)が6つあります。
いくつかのグリーンストーン・ベルトを含む縞状鉄鉱層の地域は、スペリオル湖西岸のメサビ鉄山があるミネソタ州バージニアへ続いています。
地質学的な共通性で、Wawa地区では始生代に大規模な海底噴出活動が始まり、玄武岩の噴出物と共に鉄や珪酸塩物質・炭酸塩物質が供給され、
赤鉄鉱=酸化鉄や磁鉄鉱=還元鉄ができて縞状鉄鉱層になったと考えられています。

アルゴマ型縞状鉄鉱層

始生代のグリーンストーン・ベルトに含まれ,、成因は片麻岩や花崗岩の大陸塊において広域火成活動が継続して起こり、形成されたと考えられていますが、二つの説があります。

アルゴマ型縞状鉄鉱層の二つの成因説

地殻の衝突による海底火山説

海洋地殻が大陸地殻に乗り上げるときに、海洋地殻側で海底火山活動が起こった。
海底に噴出した玄武岩質マグマは鉄やマグネシウムを多く含んでおり、中でも鉄の酸化と還元が行われて珪酸塩成分や炭酸塩成分も堆積し縞状鉄鉱層ができたとする説。
堆積した大量の火山噴出物は、火山活動が終わった後も水平方向の海洋プレートの力で、
褶曲や断層ができつつ隆起して地表に現れた。

地殻の衝突ではない火山活動説

比重の軽い海底の花崗岩や片麻岩の上部に、膨大な量の玄武岩質火山岩が継続して噴出・堆積し、それに伴って縞状鉄鉱層も堆積したとする説。
基盤の岩石と噴出した岩石の密度の違いによる沈み込み(垂直のテクトニクスとも呼ばれる)が起こり、堆積物は沈降しながら褶曲し下部の岩盤はマッシュルームのように盛り上がった。
垂直のテクトニクス

垂直のテクトニクス
*玄武岩の密度=2.9~3.1g/cm3、片麻岩や花崗岩地殻の平均密度約は2.7g/cm3です。
*上図のような物質の垂直移動は、レリー・テイラー不安定性と呼ばれている。
*日本列島も太平洋プレートが沈み込む場所に位置してます。
*日本の火山帯は、沈み込んでいくプレート上部に発生したマグマの上昇で形成されました。

縞状鉄鉱層について

世界の縞状鉄鉱床の分布
チャート起源の珪質岩層と、酸化鉄の薄層の細かい互層から形成される縞状構造が著しく発達した地層。
現在見つかっている縞状鉄鉱床は世界の全鉄鉱床の約60%に相当しています。
厚さ数十m~数百m、水平方向は数百から数千kmの長さで広がる巨大な鉄鉱床で、世界各地の楯状地とそれらの周辺台地に発見され、
特に巨大な鉱床はカナダのラブラドール地方、南アフリカのトランスバーアル地方、ブラジルのミナスジェライス州、オーストラリアのハマスレイ地方に分布しています。
形成年代は38~18億年前の間で、25億年前の時代に形成された鉱床が最も多い。
ロデニア大陸は10億年前の古大陸ですが、この大陸が分裂してゴンドワナ大陸(6億年前)になった時、縞状鉄鉱層は既に大陸内に帯状に存在しており、プレートテクトニクスによって現大陸に分離された事がわかっています。

縞状鉄鉱層の地層の特徴

酸化物相
赤鉄鉱亜相(Hematite Fe2O3)と磁鉄鉱亜相(Magnetite Fe3O4)から成り、また両者の混合物である場合も多い。
細粒潜晶質シリカ、石英粒子のモザイク連晶や、炭酸塩鉱物(カルサイトやドロマイト)を含むことがある。
磁鉄鉱亜相は磁鉄鉱、鉄珪酸塩または炭酸塩層、チャート層の互層から成る。この岩相の鉱石は通常30%~35%のFeを含んでいる。
炭酸塩相
チャートと菱鉄鉱(Siderite FeCO3)の互層を含む。多くの場合、磁鉄鉱~菱鉄鉱~珪岩をへて酸化物層に漸移しており、緩やかに沈殿した地層。鉄分25~30%。
珪酸塩相
石英の他、鉄を含んだ珪酸塩鉱物が見られる。鉄蛇紋石を主とする粘土鉱物と、これが変成作用を受けたスティルプロメレン、海緑石、鉄角閃石を含む。珪酸塩相を構成する鉱物はFeやFe2+であることが多く、還元性環境下で形成されたと考えられている。CO2が多いと菱鉄鉱が沈殿し、少ないと鉄珪酸塩が形成される。鉄分25~30%
硫化物相
黒色の炭質泥岩。7~8%の炭質物と40%前後の細かい黄鉄鉱の集合物で、酸素に乏しい環境下で沈殿した岩相。

縞状鉄鉱層の型

縞状鉄鉱層の型

アルゴマ型

始生代のグリーンストーンベルト(火山活動地域=プレートが湧き出す地域やもぐり込む地域)に多く見られ、酸化物相・炭酸塩相・硫化物相を持つが、炭酸塩相の中に時々鉄珪酸塩相が含まれている事がある。層厚 数cm~100m 延長数km内外。オンタリオ州で典型的な鉱山は、コバルト近郊のシャーマンマイン、スティープロック・レイク鉱山、Wawa地区のいくつかの鉱山である。

スペリオル湖型

原生代の大陸棚・大陸棚斜面で形成され、砂岩・頁岩のような浅海性堆積物を含み、酸化物相・炭酸塩相・珪酸塩相から構成される。層厚 数cm~1m内外 延長 数百km。ストロマトライトの光合成により地球規模で発生した酸素により形成されたと考えられている。カナダで最大の縞状鉄鉱層はラブラドール地方からケベック州に広がり、南北1,200kmを超える。この鉱床では石英中の直径1cmの磁鉄鉱と赤鉄鉱が鉱石である。

氷河堆積物型

中生代白亜紀後期の氷河が運んだ堆積物による縞状鉄鉱層。カナダ ユーコン準州、ノースウエストテリトリー に分布。

現存するストロマトライト

左 オーストラリア ハメリンプールのストロマトライト (干潮時) 右 ハメリンプール ストロマトライト (水中撮影)

画像提供:東京大学総合研究博物館

ハメリンプールのストロマトライト

ハメリンプールの水中のストロマトライト

縞状鉄鉱層の成因

縞状鉄鉱層の成因は大きく分けて2つがあり、現在活動中の熱水海底堆積物の研究により次第に明らかになった火山活動説と、以前からのストロマトライト説がある。

ストロマトライト説

オンタリオ州 Gunflint (ガンフリント)や、アメリカ ミネソタ州メサビ鉄山において、ストロマトライトの化石を含む18.5億年前の縞状鉄鉱層が発見されている。
Gunflint のストロマトライトの化石は赤いチャートとして発見されましたが、世界各地でストロマトライトの化石が発見され、地球規模の酸素供給源であるとされた。
できたばかりの原始地球は、溶けた岩石でおおわれていたが、その後長い時間をかけて冷却し固体地球になり、大陸、海洋、大気が形成されました。当時の大気は、酸素の割合が乏しく、二酸化炭素、塩化水素、硫黄化合物の多い大気でした。そのような大気において、強い酸性の雨は、陸地の岩石を分解し含まれていた珪酸や鉄分は海に流れ込み、海水に溶け込みました。オゾン層がなかったため、地球表面には強い紫外線が降り注ぎ、そのため陸上には生物が存在できず、紫外線の届かない海中で生物が発生しました。
発生した生物の中で、葉緑素を持った藍藻類(31億年前の化石もある)が増えて、光合成で酸素を放出し、海水中に多くの酸素が供給された。そのため海水に溶存していた鉄は酸化して沈殿しました。ストロマトライトは27億年前の海中に住むシアノバクテリアの残存部で構成されています。
シアノバクテリアは、太陽の光で光合成を行って酸素を発生します。27億年前以降の地層でも、浅海であったと考えられる場所ではストロマトライトが発見されています。また、シアノバクテリアは現在でも生息していて、オーストラリアのシャーク湾や、メキシコのチワワ砂漠にある淡水の泉 『クアトロ・シエネガス』ではストロマトライト見つかり、その後も幾つかの場所で相次いで発見が報告されています。
ストロマトライトStromatolites とはドイツ語の”石のカーペット”が語源です。
ストロマトライト説には異論もあり、ストロマトライトが酸素を発生し、海水中に溶存していた鉄分が酸化して沈殿したとするのは、
酸化鉄である赤鉄鉱を説明しているが、還元鉄である磁鉄鉱については十分な解明がされていませんでした。 また、鉄や珪酸が陸地から分解し溶出をしたならば、アルミナも溶出するはずですが、沈殿している場所が見つからず疑問が残ったままでした。

火山活動説

アルゴマ(Algoma)型の縞状鉄鉱層はグリーンストーン・ベルトに伴って発見される事が多く、古くから発表されていた。
始生代の中央海嶺*や付加体*付近の海底火山活動地域で、鉄分や珪酸塩、炭酸塩分が海水に供給され、酸化と還元が行われ堆積したとする説。
現在と始生代の海底熱水堆積物の対比で多くの類似性が見つかり、海底火山が鉄分などの供給に大きな役割りを果たしたと考えられている。また近年の研究では、シアノバクテリアなどを含む全ての細菌の祖先は、熱水噴出孔から発生したのではないかと考えられている。スノーボールアース(全球凍結)の時代には、海上が分厚い氷で覆われる極低温の地球において、深海底の熱水噴出孔だけに生き残った細菌が、次の新しい生態系の元になったと考えられています。
*中央海嶺=海洋プレートが湧き出す部分
*付加体=海洋プレートが大陸に潜り込む部分

カナダ東部の縞状鉄鉱層の分布

グリーンストーンベルト

グリーンストーンベルトは始生代と原生代の花崗岩体から片麻岩体に見られ、
変成された塩基性岩から超塩基性岩の火山性堆積物を含むことから、火山活動が起こった地域とされています。
グリーンストーンベルトという名前は、玄武岩と構成鉱物が同じで橄欖石を含む輝緑岩から命名され、Chlorite(緑泥石), Actinolite(アクチノ閃石),
Amphiboles(角閃石族)などの典型的な緑の鉱物を含んでいます。
また、超苦鉄質マントルに由来する火山岩の一種、コマチアイトKomatiiteを含んでいるグリーンストーンベルトもあります。

グリーンストーンベルトは数十キロから数百キロの長さを持つのが普通で、
広大、かつ多様な岩石ユニットで構成され、大陸では固有の層位学的分類に位置づけられています。
グリーンストーンベルトは鉄だけではなく、金、銀、銅、鉛、錫などの金属鉱床も作っています。
カナダにはキッドクリークやノランダなどの世界クラスの金鉱山があります。

Abitibi greenstone belt

オンタリオ州とケベック州に分布する26億7700万年前の Abitibi greenstone belt は、
世界最大の始生代のグリーンストーンベルトですが、スペリオル湖大陸塊の中では最も若い地層です。
カナディアンシールドには、いくつかのグーストーンベルトがあり、Michipicoten greenstone belt もその中の1つです。
グリーンストーンベルトの地域では氷河で削られた枕状溶岩や変成を受けた火山砕削物が見られ、Wawa地区にも枕状溶岩が露出しています。

下の図の緑の部分が海底で噴出した火山岩です。青色の矢印の部分はWawa地区です。

海洋地殻の衝突と海底火山活動

アルゴマ地方のグリーンストーンベルトの分布

Wawaの縞状鉄鉱層の露頭は、下図のようにMichipicoten Greenstone Beltの中にあり、露頭の前後数キロの道路沿いは輝緑岩の緑色の岩が多く、グリーンストーン帯の中に位置しています。北部アルゴマ地方はAlgoman Orogenyと呼ばれる27億年前の造山帯の中にあり、Dayohessarah-kabinakagami、Michipicoten、Gamitagama、Mishibishu、Schreiber-hemlo、Hemlo、Manitouwade-Homeopayneなど、数多くのグリーンストーン帯があります。

北部アルゴマ地方のグリーンストーンベルトと露頭の位置

シアノバクテリアとイシクラゲ

さて、うちの裏庭で見つけたイシクラゲと、ストロマトライトを作るシアノバクテリアの事ですが、簡単に言えばイシクラゲのご先祖がシアノバクテリアだということがわかりました。
38億年前に最初の生物が誕生し、27億年前に光合成生物が出現し、21億年前に真核生物が発生したと考えられています。シアノバクテリアは27億年前の最初の光合成生物です。生化学的な分類では、微生物はバクテリア、古細菌、真核生物の3つの系統があり、バクテリアは41億年から35億年にかけて古細菌と真核生物に分岐したと言われています。3つの系統に分類されるのは昔からなじみのある微生物です。

バクテリア
藍藻、大腸菌などの腸内細菌、ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵に関係している細菌などです。
また、シアノバクテリアは藍色細菌とも呼ばれている藍藻です。
古細菌
海底の熱水噴出孔や温泉に生息する好熱菌や好熱好酸菌、塩湖の湖水や岩塩に存在する好塩菌などです。
真核生物
他の2つより大きくて動物や植物の細胞に近く、のちの海綿、有孔虫、放散虫などの生物になっていきます。

イシクラゲ(N.commue)は藍藻属の中のネンジュモ属で、細胞が数珠(念珠)のように並んでいます。
その細胞が日光を浴びて酸素を発生させ、且つ、つながった細胞には樽型をした窒素を固定する細胞があります。
シアノバクテリアの細胞は単体や群体で光合成を行い、窒素を固定する能力を持っています。
また光合成を行いながら、窒素を固定する事と原核生物であると言う共通点で、イシクラゲの祖先であると言う説が有力視されています。
133億年前、できたばかりの宇宙は水素やヘリウムしかなく、海底のシアノバクテリアが発生した酸素によって鉄が沈殿し縞状鉄鉱が出来た事から、イギリスの科学者は『縞状鉄鉱をに含まれる酸化鉄を還元させて得られた酸素を、コップの水(H2O)に溶け込ませて飲むと、初期の地球が味わえる。』と言っていました。
今回、縞状鉄鉱層を見て来て、その後に色んなことがわかりました。はるか昔、古大陸の沿岸で生きていたシアノバクテリアの子孫が、身近な裏庭にいるのだとわかったのは天変地異のような事実でした。

現地までの旅

スペリオル湖の北岸を車で移動し、途中で2回のキャンプをしてThunder Bayに到着しました。
往復距離はおおよそ3,000kmで長い長い旅でしたが、美しい湖岸の景色と豊な自然が運転の疲れを癒してくれました。
また、道路沿いの露頭とキャンプ地は様々な地質時代の特徴がつかめて興味深い観察が出来ました。
スペリオル湖は広さで世界第一位(82,200 km2)、深さは406mで平均水温は4℃です。


スターミネラルズジャパンのページを別ページで表示

「Wawaの縞状鉄鉱層」に2件のフィードバックがあります

  1. グーグルマップで場所を確認し、ストリートビューで露頭を眺めました。サイトに掲載されている写真とも対応がつきました。簡単に行けるところではないですが、沢山の写真を見ながら詳しい解説を読んでいるとバーチャル巡検に参加している気分になります。
    ミシガン・ベイシンも興味深く読ませて頂きました。充実したサイトですね。有難うございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です